2009年11月9日月曜日

「命令違反」が組織を伸ばす(光文社)

著者;菊澤研宗 出版社:光文社 発行年:2007年 評価:☆☆☆☆☆
 タイトルだけからすると「キワモノ」に見えてしまうが、中身は新制度経済学派にもとづく「合理的に行動した結果の不合理」をわかりやすく説明してくれる正統派の経営学。人間は限定合理的な存在だからその「枠内」でしか合理的に考えることができない。だからこそ議論風発の組織を作り上げていかなければならない…という流れになるが、理想の組織論がどうあるべきかについては今後の著作物で明らかになっていくだろう。第二次世界大戦中の数々の軍事史を取引コストやエージェンシー理論で読み解き、これまで「非合理」とされてきた戦略が実はそれなりに合理性をもっていたことを明らかにする。プロスペクト理論などは自分自身の日常生活においても「このまま失敗するよりかはダメモトでやってみよう」的な発想でトキに出現する考え方でもある。
 「やってみなきゃわからない」の前に、さらに合理性を高めていく努力があればインパール作戦で多くの兵士が犠牲になることもなかったわけだが、これまで特定の将校の人格的な問題に帰着していた結論がこの本でひっくりかえされる。「なぜ失敗したのか」「非合理だったから」ではその先に議論が展開していかない。ジャワ軍政など成功した事例との対比も見事。760円でこの内容はかなりのお買い得。

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