2009年11月15日日曜日

イヌネコにしか心を開けない人たち(幻冬舎)

著者:香山リカ 出版社:幻冬舎 発行年:2008年 評価:☆☆☆
 最初はホノボノとした出だしとなっているが、ドルフィン・セラピーの紹介あたりから、著者独自の「批判精神」が発揮されはじめ、ラストにくると何某団体や何某団体から猛抗議を受けかねない内容になっているような…。いや、つまり環境問題や動物愛護問題について私自身も考えるにやぶさかではないのだが、「地域猫」をめぐる住民紛争や、2002年に移民制限を提唱した極右政治家ピム・フォルタイン氏の暗殺事件などだんだん運動が過激化していく一方で、一般社会(この場合には多数の人々という意味で)との交流がうまくいかなくなっている事象について著者独自の分析が加えられている。
 イヌは大好きだし、ネコもあの冷たさを除けばまあ好きなほうではあるが、かといって人間の快適な居住空間が侵害された場合の裁判所の判断は最初から決まっている。にもかかわらず動物愛護が先鋭化していく根底には、最大多数の最大幸福の「分母」のなかに自分のペットは…という個別的な愛情がプライオリティを持ちすぎている現実がある。このプライオリティ、個人の空間の中ではまったく個人の問題だが、社会問題として先鋭化すると、社会的摩擦が起きる。これってまるで「逆じゃあない…」ということになるわけだが…。著者自身もイヌとネコを飼う動物愛護の精神の持ち主ではあるが、それでもペット関連市場の伸びとこのバブル崩壊後の最大の不況の中で、何か「ヘン」という気持ちが代弁されているような気がする。あ、けっしてイヌやネコが嫌いなわけではなくて私も大好きなんですからそのあたりは誤読なきように…エコバッグもちゃんと持っていますし…。

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