2009年11月22日日曜日

刑法入門(岩波書店)


著者:山口厚 出版社:岩波書店 発行年:2008年 評価:☆☆☆☆☆
最初は手にとりにくいかもしれないが、いったん読み始めると一気に読み通してしまいたくなるほど面白い刑法入門となっている。巻末には著者自身の推薦による刑法関連の推薦図書もあげられている。犯罪とは何か、法律とは何か、法治国家としてあるべき刑事のあり方や哲学は何かといったかなり込み入った話を順序立てて整理して著述してあり、法律が苦手な人にも一読をお勧めしたい良書。「わいせつ物犯罪罪」(刑法175条)などを例にあげて犯罪の本質を「利益侵害」と考えるべきなのか「倫理規範に違反する」と考えるべきなのかといった根底についてまで考える材料を提供してくれている。こうしたウェブ時代にはもっともトピカルなテーマになりそうだが、法の趣旨をいかに解釈すれば近代法治国家にふさわしい適用になるのかがよくわかる。そして課題は課題として設定されているので、裁判員制度のあり方も含めて「判例」との整合性や時代の整合性、そして「市民感覚」だけでは司法制度はやはり運用はできなさそうだとの印象を読後にいだく。228ページの充実の新書。

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