2009年11月9日月曜日

社長のためのマキャベリズム(中央公論新社)

著者:鹿島茂 出版社:中央公論新社 発行年:2003年
 経営戦略では菊澤研宗、ビジネス・経営では小島一慶、そしてフランス文学その他ではこの鹿島茂氏の著作物を購入すればまずはずれがない、というのが現在の私の本の買い方だ。新刊本ではなく中古本屋あるいは古本屋でしか入手できないケースもあるのだが、やはりこれらの著者のルーツとなる著作物なので、見つけたときにはなるべくその場で購入して家に持ち帰るようにしている。
 で、この「社長のためのマキャベリズム」。いろいろな意味で自分自身の周囲の実際の人間と対比していくと非常に面白い。合併においては「人はささいな侮辱には仕返ししようとするが、大いなる侮辱には報復しえない」のであるから、徹底的に「大いなる侮辱」で合併してしまえ…さらには同族経営の会社を買収すれば統治はきわめて簡単…ということで東南アジアの市場を狙うSントリーグループと○リングループの経営統合が彷彿としてくる。また社員を味方につけなくては社長は存続しえない、ストックオプション、間接金融などが論じられる。また「恩義の担保よりも恐怖心の担保のほうが効率はいい」といったくだりには「う~ん」とうなってしまう。「慎重であるよりは果敢であるほうがよい」という最後の結論に至るまでフィレンツェ共和国にあてはめられるべきであった君主論が株式会社の社長にも適合されていく。この手腕は独自のフランス文学論や風俗史を書き連ねてきた鹿島茂氏の才能が全開といったところ。まだ文庫化はされていないようだが、2003年発売のこの本、2009年もしくは2010年の社長にも読んで損するところなしといった感。

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