2009年11月11日水曜日

弱者の兵法(アスペクト)

著者:野村克也 出版社:アスペクト 発行年:2009年
 実践で役立つデータ収集をこれだけ「地」で活用した野球の指導者は、やはり日本のプロ野球の中では唯一の存在といっていいだろう。もちろん現在ではノートパソコンやデジタルムービーを活用するのはプロの選手では当たり前のことだと思うが、アナログの時代からピッチャーの配球を色分けして分析していたのはやはり野村克也氏がはじめての存在だ。持てる力をすべて出し切るという意味で「野球を楽しむ」というのはいいが、ただ単に面白がるのではだめだ…というかなり厳しい内容になっているのが本書の特徴。「限界」と「未熟」は違うという指摘に首が縮まる…。この厳しさは読者に対してというよりも現役のプロの選手に向けた内容かもしれない。この老指揮官は夏の発行時点ですでに「引退」をある程度は覚悟していたのだろう。「高校野球がなぜあんなに人気があるのか考えてみろ」という問いかけは、ひたすらただ単に働くだけの社会人にとっても答えるのに窮する質問かもしれない。技術的なことではなく「ひたむきさ」という要素だけを取り出してみれば、はたして自分自身が「ひたむきさ」「熱意」だけで人を惹きつけることができているのか…というプロフェッショナルの自覚の問題へとつながるからだ。

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