2009年11月18日水曜日

異業種競争戦略(日本経済新聞出版社)

著者:内田和成 出版社:日本経済新聞出版社 発行年:2009年 評価:☆☆☆☆☆
 ボストン・コンサルティング・グループのシニア・アドバイザーをへて早稲田大学の教授でもある著者。工学部出身や文学部出身など多様な才能をぶつけあうというBCGの出身らしい研ぎ澄まされた事業連鎖の分析が美しい。図がただ左から右に並んでいるだけなのに、それぞれが統合されていく様子がよくわかる。そしてなぜゆえに統合されていったのか、統合していく必要条件は何かといった事柄がページをめくるごとに明らかになっていく。百貨店のアンチテーゼから生まれたスーパーマーケット、スーパーマーケットからスピンアウトしたコンビニエンストアと流通の歴史がさっとわかる副産物もある。すべては消費者ニーズのためといってしまえば簡単すぎるが、その消費者ニーズを満たすために事業構造や事業連鎖を変化させていった企業はやはり強い。事業構造が違えばコスト構造も異なるのでマイクロソフトとgoogleの競争というのは、同じ市場競争という原理だけでは語れないという理由も説明される。
個人的には高速道路の収益構造で離れた場所にサービスエリアを設定して周辺にビジネスを拡大していくというenlagementという手法に注目。だれもが高速道路の主軸で利益をあげようとするが、その逆に高速道路の周辺で商売をするという考え方も当然ありだ。パソコンの時代だからといってパソコンを作ることだけが利益をあげる手段ではあるまい。もしかするとエレコムやサンワサプライといったパソコン周辺機器のメーカーのほうが利益率が高い可能性だってある。これをたとえば出版業で考えてみると…。おそらくビジネス書籍などが売れているのだからそのenlargementは何か、といったような応用もできるはず。読んでいて読者のフレームワークや想像力も刺激してくれる「ビジネス書籍」というよりも「触発」を招く競争戦略の書。

0 件のコメント: