2012年9月30日日曜日

うれしなつかし修学旅行(ネスコ)

著者:速水 栄 出版社:ネスコ 発行年:1999年 本体価格:1600円
 もはや新刊書店では入手できないが、とあるところで評判を聞いてamazonで入手。いわゆる「遠足」の歴史からお弁当の定番、修学旅行をめぐるさまざまな事件や事故(敗戦直後の修学旅行では旅館の床が抜けたり集団食中毒なども発生していた)、レクリエーションと枕投げなど夜の遊び、さらに修学旅行から派生してユースホステル全盛期の「若者」という特集も。
 この本では遠足の「きまりごと」が年々バージョンアップして、旧版よりもあたらしいバージョンに追加の規則や取り決めなどが加筆される傾向にあることが指摘されているが、デジタル社会の昨今、改訂作業はさらに楽になっているはずだが、あまりに細密すぎてマグナ・カルタみたいになっていなければいいのだが…。
 どこから読んでも面白いが、そういえばこれあった…というのがレクリエーションの「歌」。中学生のころ某YMCAのキャンプに参加し、当時、感動しながら「シャロム」「今日の日はさようなら」などを歌った記憶が蘇ったが、考えてみればこの本を読むまでは10代のころにキャンプファイアに参加したことすら忘れていた。というよりも忘れようとしていた…。思わず本を横において、「あ~~」とのたうちまわったのだが、キャンプファイアやらフォークダンスやらには20年後、30年後にはとてつもない羞恥心とともに心に細密にわたって記憶をよびおこす力がある…。そのほか観光地のおみやげ「木刀」の歴史まで著者の探求はとどまるところをしらない。まだインターネットもそれほど整備されていない時代で、参考書籍も簡単にはそらわないジャンルで、よくここまで「修学旅行」にまつわるエピソードを収集し、さらに編集してしまったものだと思う。「調査研究」の教科書としても十分通じる丹念な取材がうかがえる名著。

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