2012年9月27日木曜日

闇金ウシジマくん 第1巻~第25巻(小学館)

著者:真鍋昌平 出版社:小学館 発行年:2004年~2012年 本体価格:514円
 「ナニワ金融道」は合法の金融業者だが、このシリーズは免許をもっていない「闇金融業者」の話。金銭にまつわる漫画は、ユーモラスな部分が数%であとはだいたい重苦しい話が続くが、初期のエピソードはいずれも借金をした人間が自我崩壊やら行方不明やらと苦しい話が満載。途中からやや救いがみえる展開もでてはくるが、合法の消費者金融で相手にされず、闇金融から借金する人間が主役になると、なかなか救いもみえにくい。このシリーズが累計で600万部売れ、映画化もされるというのは、やはり平成大不況という時代の産物か。「ナニワ金融道」がバブル経済崩壊直後の不動産屋や起業したばかりの運送屋だったのに対して、この漫画では、フリーター、ニート、スーパータクシー運転手、地方のヤンキー、パチンコ中毒の主婦と生活感覚があふれすぎてて、それがまたリアルな筆さばきが描かれるのものだから読後感が悪いことこのうえない。ただ「分を超えた借金はいけないですよ」という理詰めよりも、リアル感あふれる登場人物の「人生オワコン」状態の様子のほうが説得力はある。それがまた、消費離れをしている若者には受けているのかもしれない。
 「救い」はほとんどないのだが、それでもすべての登場人物が薬物にはまったり、やばい業界に売られてしまったりといった展開にならないのは、安易な「転落」はある意味では「救済」にもなりかねないからではないか、と思う。自我が崩壊してしまった人には借金の額やら対面はもう眼中からは消えてしまうわけだし。
 多少救いがみえてきた25巻を読み終わり、自我の崩壊以上の「救いのなさ」はこれから26巻以後で始まるのだろう…と予測。明晰な論理と倫理観を持ちつつの「崩落」。そっちのほうがこれまで以上にきっと救いがない。

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