2012年9月3日月曜日

2015年の食料危機(東洋経済新報社)

著者:斎藤利男 出版社:東洋経済新報社 発行年:2012年 本体価格:1600円
 食料問題の資料として購入。1時間ほどで読了。部分的に有用な著述も多いが、円高が円安に転じて穀物輸入が困難になり牛丼の価格が1000円に…というストーリーはやや悲観的すぎ、かつ実現性が乏しいストーリーと思えた。書店に並べられている経済書籍やビジネス書籍にはやや極端に悲観的な予想をまず呈示して、それから本題に入る構成のものが多いのだが、あまりに楽観的な予測も危険だが悲観的すぎる予測も問題だ。
 バイオエタノール政策がトウモロコシの需給に影響を与えるという根拠もやや疑わしい。バイオエタノールの需要が世界の供給に対して与える影響がそれほどあるのかどうか。ただヘッドファンドマネージャーが執筆しているだけあって、穀物市場における投資マネーに関する解説はわかりやすかった。
 水資源問題と食料問題は密接にリンクしているし、人口問題も農地が住宅地に変換されることになるので微妙にリンクしている。企業レベル、家計レベル、国レベルでみる食料問題については、もはやこれだけ世界経済がボーダーレスになってくるとあまり論議する意味が乏しく、むしろ世界レベルでみた農地の砂漠化や水資源の枯渇といった視点でとらえていかないと、円安になったら日本国内で食料問題が深刻になるかのように流れを読み違えてしまう可能性がある(たとえ牛丼の値段が1000円になっても貨幣価値が暴落していればほかの商品と比較して牛丼だけが大きな問題になるわけではないし)。200ページ近くの本で本体価格が1600円。う~ん。やや割高…。

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