2012年9月10日月曜日

エリザベスⅠ世(講談社)

著者:青木道彦 出版社:講談社 発行年:2000年 本体価格:740円
 ウェブ時代になって当日の為替相場やスポーツの結果、天気予報などの情報はきわめて入手しやすくなった。簡単な漢和辞典や英和辞典などの代わりにもなる。ただし同時にウェブの限界も感じる。たとえば歴史関係の理由や時代背景などは、どれだけウェブの用語辞典を検索しても一面的な歴史かあるいは特定のイデオロギーにいろどられた一面的な歴史観のみが目立つ。そういう意味では書籍もしくは電子書籍の役割はやはりなくならない。
 エリザベスⅠ世の生きた16世紀ヨーロッパの時代背景をベースにジェントリの進出によるエリザベス時代の統治体制や文化、宗教問題、スペインやフランスなどとの外交問題について解説されたのがこの本で、これだけの「情報」をウェブで著述するのにはとてつもない容量が必要になるだろう。英国艦隊がスペイン艦隊をほうむりさるまでのスペインと英国との関係については、どうしてもネーデルランドと英国、そしてネーデルランドとスペイン・ハプスブルグ王朝との宗教的・経済的関係に目をむけざるをえないが、丹念に歴史の流れについて著述されている。ちょっとした地図の挿入も嬉しいかぎり。複雑な内国・外国の状況を読み解いて、生き残りをかけたのがエリザベスⅠ世だが、当時の知的教養レベルをクリアするだけでなく、新しい文化(新大陸関係)の知識も吸収し、さらに周囲に優れた顧問を取り揃えたのが勝ち残りの要因か。それに加えて絶妙のバランス感覚が他の君主と比較するときわだっていたのだろう。ウェブも電子メールもない時代にどうやってそうした知識とバランスを蓄えることができたのか。歴史の一面を知るとさらに質問や疑問がさらに数珠つながりにわいてくる。

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