2012年9月23日日曜日

カラスの親指(講談社)

著者:道尾秀介 出版社:講談社 発行年:2011年 本体価格:743円
 「コンゲーム」(大掛かりな詐欺)の物語。闇金融稼業の「使い走り」をしていた主人公はとある事件をきっかけに裏稼業から足をあらう。しかしそのスジからはずっと追われ続け…。という展開だ。「債務整理屋」「闇金融」とちょっと穏やかではない稼業の話がでてくるが途中、行くあてのない姉妹と姉の彼氏など過去も年齢も異なる数人が共同生活を送る場面が微笑ましい。債務整理屋の手口にはいろいろあるが、基本的には経営者と1対1の関係にもちこんで手形帳や小切手帳から債務を勝手に作り出し、筆頭債権者になる。債権者平等の原則により残余財産のうち債権金額に応じて分配を受けることができる。それ以外にも消費者金融を1つにまとめてより高額な金利をせしめたり手数料だけ受け取って逃げてしまうという手口なども。それぞれこうした裏稼業も専門家・分業化しているという話をきくが、基本的には「利益」にならないことはあまり手がけない(恨みで仕事をしても足がつくだけで、足がついた段階で組織からは切られてしまうリスクが高いようだ)。ずっと追われに追われて執着されてしまう恐怖はストーカー小説「キャリー」にも通じるものがこの本にはある。でもまあラストはわりあいハッピーエンドなのが救いか。金融関係でいえば連帯保証の話などもでてきたりして現代の「落とし穴」は一通り舞台回しに用いられているところが面白い。

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