2012年9月2日日曜日

遊牧民から見た世界史(日本経済新聞出版社)

著者:杉山正明 出版社:日本経済新聞出版社 発行年:2003年 本体価格:857円 評価:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 ビジネス雑誌や各種の読書評でとりあげられないほうが珍しいような名著。歴史の専門家でなくてもビジネスパーソンが手にとって、いかにいびつな世界史観を学習して固定化してきたのかがわかる。
 「世界史」とはあるものの実際にはユーラシア大陸の中央部分をメインに遊牧民族と農耕民族(こういう大別化で把握する自分の考え方にも問題はあるが)に大雑把にわけて「歴史」を概観していく。著者の考え方はもっと緻密で、遊牧と農耕も厳密にきっちりわけて考えることすらよしとはしていない。そしてもちろんそうした見方こそが現実的である。
 ローマ帝国の歴史の本を読んでいても中国の三国志の時代であっても常に地図の片隅には大きく取り上げられつつも本文では言及されない「契丹」「スキタイ」「モンゴル」といった国の在り方や歴史をとらえることで、これまでに見たことがない世界史像が脳内に立ち上がる。世界史の基礎知識がなくても本文でかなり丁寧に用語解説がなされているため、「まったくわからない」ということはないだろう。むしろわからなくても読み進めることで、国民国家でもなく民族国家でもない遊牧民の国家という枠組みなどが理解できるようになる。世間一般に名著とされている本はやはり一度は読んでみるもの、と再認識。

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