2012年9月18日火曜日

電子書籍の衝撃(ディスカヴァー)

著者:佐々木俊尚 出版社:ディスカヴァー・トウェンティワン 発行年:2010年 本体価格:1100円
 キンドルもしくはiPadなどにはある程度汎用性がでてきたように思う。電車のなかでiPadを操作している人もちらほらみかけるようになってきたし、一部のマニアが先行しているだけでは日常生活に定着するかどうかは正直わからない部分はあった。
 iPhoneやiPod nanoなどはすでに価格以上の恩恵を得ているものの、電子書籍についてはまだ判断留保。非常にこの本の内容はフラット化する書籍や著者のネームヴァリューに左右されないコンテンツという魅力的なアイディアにあふれているものの、それでは既存の出版社がだめか…というとそれほどまだ崩壊するにはいたっていないと思う。読書がたとえば受験勉強のような一種の情報収集だけのものであればデジタル化と整合性をもつ。あるいは小説などのエンターテイメントに特化するのであれば、それもまた電子書籍のほうが便利という向きもあるかもしれない。ただしなんとなくページを開いてぼんやりブラウンジングする…あるいは触感や書籍の経年劣化を楽しみながら現実世界とは異なる世界に旅立つというような場合にはアナログな紙の媒体のほうが優勢であろう。逆に会計学や法律の勉強などをするには、分量がかさばるだけの紙媒体よりも電子書籍のほうがむいているかもしれない(iPhoneの六法全書のアプリなどは非常に便利だ)。出版というビジネスがいったん崩壊して新たな装いで再構築されるというビジョンはある意味では魅力的だ。音楽市場が実際にそうなっているが、自分自身でスナップスキャンを用いてPDFファイルを読むという経験をしてみると、はたして本当に紙の媒体と電子書籍はフラットなのか?♯というか「半音」程度は異なるのではないか?という疑問がわく。もしありうるとすれば、市場が半分に分断されて、紙媒体50%、電子書籍50%という住み分けではないかと思う。とはいえ、この本の内容、これから新しいiPadが発売されるたびに出版社や新聞社のビジネスモデルに脅威を与えることになりそうだ。

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