2012年7月30日月曜日

ロスジェネの逆襲(ダイヤモンド社)

著者:池井戸潤 出版社:ダイヤモンド社 発行年:2012年 本体価格:1500円
 2004年当時に連載されていた小説ということで、旧商法の規定がちょこっと顔を出す。まあ会社法になっても第三者割当増資の規定や判例がそれほど変化するわけではないが…。ライブドアとフジテレビジョンとの株式争奪合戦や新株予約権の発行など、当時は日本社会ではなじみがなかった事例が小説自立てが満載。しかも今でもあちこちの銀行とその子会社の証券会社との間でありそうな「不和」などが見事に描かれている。アドバイザリーの手数料の巨額さは想像以上だが、買収をしかける側も守る側も当然しかるべきアドバイザーはいるはずだから、成功報酬も含めてこの小説にあるような契約をそれぞれ締結しているのだろう。で、貸付金などの受取利息よりも明らかに買収などの手数料のほうが収益率が高いのだから、M&A業務をてがける経験者にあちこちから声がかかるのも当然という気がする。企業結合会計基準などにも顔を出す「逆取得」(規模の小さなほうが大きなほうに買収をしかけること)も出てくるので、ちょっとしたM&A入門の本にもなるし、団塊の世代対バブル世代対ロストジェネレーション世代の対立とも親会社と子会社との不和とも読み取ることができる。で、そうした不和はどうなるか?いやいやもちろん、「アウフヘーベン」して大団円を迎える。経済小説はこうでなくっちゃ。

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