2012年7月25日水曜日

財務省(新潮社)

著者:榊原英資 出版社:新潮社 発行年:2012年 本体価格:680円
 財務省全体の話というよりも歴代キャリアのエピソード紹介と一種のエリート教育礼賛みたいなトーンが強いのがなんともかんとも…。組織の活性化のためにも「天下り」は必要悪みたいな論調もあり、それも一つの見識ではある。ただ、「天下り」されたほうの財団法人やら民間企業の「不活性化」にはつながりやすくなるため、財務省だけ活性化しても国全体の民間活力は衰えるだろうな、という感想が1つ。また、それだけ優秀な事務次官やら財務官やらが歴代1つの組織を率いていたにもかかわらず、100兆円近い財政赤字を抱え込むに至った経緯については反省や改善点があげられていないのが残念だ、という感想が1つ。「多少の接待は当然という傲り」という多少の反省点はあるものの、省庁や司法関係者ともなればコーヒー1杯すら潔癖に対応する方々もいる一方で、刑事基礎された元課長補佐を「擁護」(?)するのはちょっとおかしい、というか「多少」というレベルの話ではないのではないか、という疑問も。とはいえ、こうした一種偏りがあるようにしかみえない論調を21世紀の今になってもひきずっている元キャリアがいる、という意味では貴重な1冊だろう。あ、とはいえ財務省のキャリア組は、なんだかんだとはいってもむちゃくちゃ頭がよく、人格も優れている方々が「多い」のは事実。むしろそれだけ優秀な人材を集めておいて、それを活用しきれていない現実をどう反省していくのか、どう未来にいかしていくのかといった視点の著作物を待ちたい。

0 件のコメント: