2012年7月29日日曜日

斎藤孝のざっくり!世界史(祥伝社)

著者:斎藤孝 出版社:祥伝社 発行年:2011年 本体価格:619円
 高校受験のときに選択した課目は「現代社会」「日本史」「地理」の3科目で「世界史」は選択していなかった(現在の高校生は世界史は必修課目だが、前の学習指導要領では選択課目だった)。暗記事項がとにかく多いうえに論述も「難しい」という評判だったため敬遠したのだが、それが大きな間違いだったのは、フランス語の授業の1時間目からノルマン王朝についての質疑応答がなされ、法学概論ではローマ法やナポレオン法典、近代経済学ではオーストリア末期のウィーンと世界史を履修していなければ理解できない事柄がすでに「学習済み」として進行していたからである(というかそうでなければ、確かに「近代」「ポストモダン」といったことから大学の授業を開始することになるが、それはさすがに知的水準が低いといわれてもしかたがない)。そこでこの本だが、世界史を履修していない大学生や社会人にも必要最低限の内容がざっくり説明されている。第1章では西洋近代化について述べられており、マックス・ウェーバーなど社会学の履修に必要な事柄が述べられ、第2章では帝国について述べられている。マルクス経済学や宗教学には必要で、マルクスを批判的に論じるにせよ好意的に論じるにせよ「帝国主義」とは何か、は理解できている必要がある。第3章では消費の対象となる商品論から記号論まで。ボードリヤールなどポストモダンの理論やマーケティング、商学概論に必要な内容だ。そして第4章で共産主義やファシズム、第5章で宗教や中世についてが述べられ、近代経済学が生まれるにいたった経緯や私的所有権、国際関係論の理解に必要な内容が網羅されている。世界史の教科書を1から読むという方法もあるかもしれないが、それではあまりに効率が悪い。「とりあえず」資本主義の基礎ともいえる私的所有権について理解するのであれば、この本に書いてあることをイメージできるようにさえしておけばいい。受験や教養としては内容が不足しているかもしれないが、とりあえずなんらかの専門的分野について学習するときの参考書になりうる。水準としてはけっして低くない、というよりもかなり高度な内容まで論述されており、これが619円はきわめて安い買い物だろう。

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