2010年2月28日日曜日

論点思考(東洋経済新報社)

 著者:内田和成 出版社:東洋経済新報社 発行年:2010年 本体価格1600円 評価:☆☆☆☆
 間違った論点について問題解決をしてもそれは徒労に終わる。適切な問題を設定してそれを解くことこそが本質とする著者の考え方は、ビジネスや労働争議、政治的課題そのほかにも応用可能。問題設定を間違えた史上最大のポリティカルメッセージはやはり「共産主義」だろう。アフリカ大陸の途上中の国々には本来は食糧問題や民族問題をまず解決するべき課題があったのに、「共産主義」は間違った命題を与えてしまった。その後内乱が終了せず民族問題も解決しないのは、本来であればある程度国力がついてから議論すべき課題を、貧しい国民に間違った形で与えてしまったことにも一因はある。もちろんそれ以外にも多様な原因はあるだろうが。
 こうした間違いのひとつはこの著作物にある「なぜ?」を繰り返すことが共産主義者の組成する組織には一定の段階で許されないということがある(ある一定以上は執行部が決定するという民主集中制の問題)。「論点は動く」のだから絶対不変のテーゼはとてもリスキーなのだが、誰のためのどの時点の論点を解いているのかを明確にしておかなければ、結局は問題解決にはつながらない。「論点は進化」してさらに作業や議論で別の側面も現れてくるが、党派の差異や執行部と違う考えも許容範囲が狭いとそうした論点の進化にはついていけない。「あたりをつける」「白黒つけられそうなところからアプローチする」という方式も採用できない。飢餓問題の根底には「物流問題がありそうだ」とは思ってもアプローチは常に「階級闘争」という一番上からはじまることになる。そして解決できるかできないかを見極める…「なぜを5回繰り返す」…という資本主義の企業であれば当然やるべきことすらできない硬直した思想。それではやはり論点が動いても変化しても問題解決の正しいプロセスは踏めないことに。現象をみてから仮説を構築してそれの妥当性を吟味する。PDSサイクルの変形バージョンと考えればいいのだが、こういう論点思考はパソコンの表計算ソフトが発達すればするほどさらに重要になってくるのだろう。逆に硬直した組織やカンガエだけを維持していると首尾一貫はしていえるが、変化の時代から取り残されていくという事態になることだろう。
                

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