2010年2月14日日曜日

数学的にありえない上巻・下巻(文藝春秋)

著者:アダム・ファウアー 出版社:文藝春秋 発行年:2009年 本体価格:上巻733円、下巻733円 評価:☆☆☆☆☆
 タイトルが「数学的にありえない」で中身も数学の話かとおもいきや、確かに一定の確率論やら「ラプラスの魔」(昔、科学史で勉強した…)など数学的な要素も多少はある。が、実際にはアクションあり、ラブロマンスめいたものあり、そしてSF的な要素ありと盛りだくさんの内容。ギャンブル依存症の数学者ケインは確率論にもとづいてポーカーをするが、ありえない「負け」をロシアン・マフィアに背負ってしまう。そして、双子の兄弟は統合失調症をわずらっており…。正直、最初は暗くラストに近づけば近づくほど切ない調子になってくるが、エンターテイメントとはかくあるべしというラストへ。そして登場人物は細密にわたる「過去」のデータが読者に提示されており、「善悪の単純な対立」的な構図はまったくない。「こんなの、ありえねー」というようなことが数学的な確率で「ありうる」のだとしたら…というアイデアと、ユングなどの心理学の用語が結合して、あまり過去には類をみないミステリー・アクション・SF推理小説の誕生となった。1ページをめくりだしたら、そのまま下巻のラストまで読み通してしまうこと間違いなし。

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