2010年2月24日水曜日

近頃の若者はなぜダメなのか(光文社)

著者:原田曜平 出版社:光文社 発行年:2010年 本体価格:820円
 KYという言葉から「新しい文化」よりも昔の村社会の復活を指摘する著者。キャラを作る…かつてはペルソナ(仮面)という言葉が悪い意味で使われていたが…がある意味人間関係の潤滑油の役目を果たしている部分も指摘。ネット空間もある意味で閉じられた空間になっているというが、確かにそういう面があるかもしれない。共通話題や一体感、そして「村十分」(ネット関係ですべてが把握されるため彼女と別れることも難しくなるという逆現象)などが興味深い。ただこれらも一種の多面的な文化の一側面だとは思う。かなり個性の多様化が進んでいて、かつての70年代の学園ものドラマよりも実際はさらに個性の多様化が進んでおり、ちょっとステレオタイプであれこれ議論する時代ではないのかもしれないとも思ったり。タイトルの割には内容的には過去にさかのぼりつつある若い世代の生活がルポされているが、これって国民性の問題もあるので世代論やデジタルツールの問題のせいにはできない。「昭和的価値観」と総称されるものも、昭和という時代が今思えばさして悪い時代ではなかった(高度経済成長時代もあったわけだし)ということを連想すれば、必ずしも「良い」「悪い」で分割はできないだろう。「ここまで多様化が進んでいるようで、ここまで昭和的な文化が根付いていたのか」というのを再確認する意味では面白い新書。実際、就職面接の時期の「昭和的価値観」(しかもバブル以前の)の雰囲気は、80年代よりも70年代にフィットする様相を呈しているように、個人的には思える。

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