
本体価格:上巻・下巻とも1,100円 評価:☆☆☆☆☆
フロスト警部シリーズが登場したとき、あまりの「いきあたりばったり展開」と人情味あふれるフロスト警部の魅力に圧倒されて一気に読み通してしまった。その後、「フロスト日和」「夜のフロスト」と続編はかなり長いスパンを置いて発刊。版権そのものは東京創元社は獲得していたのだと思うが、おそらく翻訳に手間取ったのだろう。原作の微妙なニュアンスをいかに日本語に適切に置き換えるかといった翻訳者と編集者の苦労の結果がこの名作シリーズをうんだといえる。機械装置的に翻訳するとそれだけ発行は早まるが、おそらくそれでは原作の魅力の半分も読者には伝わらない(「夜のフロスト」の英文を実際に翻訳前に読んでみたが、英文法に忠実に頭の中で翻訳していると確かに物語の流れはわかるがぜんぜん面白くない)。芹澤恵さんが上巻・下巻を翻訳しているが、スラングからなにからまた面白い日本語をばんばん使ってこのミステリーの傑作をさらに面白く読ませてくれている。著者のウィングフィールド氏がお亡くなりになられたため、このフロスト警部シリーズも残り2作。ここまできたらじっくり時間とエネルギーをかけた続編の翻訳を心待ちにするしかない。安易な翻訳で安易に出版されるよりも何年ものスパンがあいても、面白いフロスト警部シリーズを待つほうがよい。こんなすばらしいミステリーの大作。実はいったんその世界に入ると徹夜してでも一気に読み通してしまうのが不可思議。上巻と下巻あわせて2,200円は格安で、続編が出版されたらブックオフなどではなく必ず書店ですぐ購入することにしよう。デントン警察署の今後の行く末や多様な人間像に官僚社会とそのはずれモノ。ミステリーではあるが、ちょっとしたフロスト警部の「心遣い」に登場人物も読者もほろっと泣かされる…。
0 件のコメント:
コメントを投稿