2010年2月13日土曜日

天使と悪魔の真実(竹書房)

著者:ダン・バーンスタイン、アーン・デ・カイザー 出版社:竹書房 発行年:2005年 本体価格:1600円
 映画「天使と悪魔」と原作を読んで「なんだか奇妙な話だ…」と思いつつ、思わず衝動買いをしたのがこの解説本。小説だからもちろん事実を利用して虚構の世界を作り上げているわけだが、解説本ではイタリアの遺跡や文化、歴史などをもとにして「虚構」を学説で検証していく。これがまた面白い。生物学者の「遺伝標識」で出エジプト記の著述が正しかったことなども紹介されており、ミステリーを読んだあとにこの本を読むとさらに原作の面白さが際立つ。凡庸な小説だったらここまで解説本が書かれることもないだろうし映画化されることもないわけで、バチカンを舞台にした「天使と悪魔」、やはりすごい小説なんだと思う。
 007の昔のシリーズでは「世界制服」をたくらむ『あくの組織」がよく登場していたが、小説ではイルミナティという実際に存在したであろう秘密結社を利用した「陰謀」がメインテーマとなる。そしてカソリックの特異な世界全体を覆う「組織構造」とイルミナティの関係は「科学対宗教」という構図で描写されていくのだが、やはり実際の歴史は二分対立ではなくより複雑で微妙な関係を保っていたことも明らかに。解説本のこの本から映画を見るという手もあるし、小説→解説本→映画という順序もありうると思う。順序は問わずに「天使と悪魔」の世界に浸るというのも歴史の楽しみ方のひとつではなかろうか。

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