2010年2月14日日曜日

「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト(光文社)

著者:酒井穣 出版社:講談社 発行年:2010年 本体価格:740円
 この手の自己啓発もしくはビジネス書籍は現在書店であふれるほど販売されているが、一定の基軸で最初から振り分けておかないと、あの本もこの本もと乱雑に読み終えた結果、日常生活にはなんの向上もないまま時間だけが経過していくという結末となる。そういう中で「著者で選ぶ」という方法はけっこう有益で、同じ著者である以上はそれほど相互に矛盾したことは書かないであろうということと、論点につながりがあるので過去の読書経歴とこれからの読書暦に「つながり」を持たせることができる。酒井氏の著作物もそうした一連の流れの中で読み始めたわけで、正規分布の図などをもとにした図解の技術など非常にわかりやすい内容。おそらく現段階では37歳ぐらいのビジネスパーソンのはずだが、物事の見方が非常にクレバーでシャープ。独立経営の道を歩まれた企業家だけのことはあり、既存の学問体系にオリジナルのビジョンを付け加えてさらに豊富な読書の中から引用文を掲載。海外へのアウトソースは正規分布の一番中央に近い分布から行われていくという指摘は日本の格差社会の問題とリンクしていろいろな部分で応用がきくだろう。日本国内で標準スキルで「コピー可能」なものは海外のコストが安い部分に移転していくとなると、国内では「それよりも上」か「下」のスキルで勝負することになる。これを別の産業にあてはめていくと…という発想だ。ヤクルトの野村監督ではないが「使わない機能をたくさん装備した家電」や「なんでもできる平均的な選手」よりも「癖があってもこの場面ではこれに強い」という特技をもったほうが、これからは強いという結論も見えてくるわけだ。標準的なピッチャーよりも、左打者には強い左投げのアンダースローのピッチャーであれば、おそらくスピードやスタミナでは見劣る部分があっても試合の起用回数はトータルで増えていくという考え方など個人的にはあちこちの論点につなげることができた。740円で内容がかなり応用がきくので、電車のなかでなど気軽に、しかし応用可能な部分をあれこれ考えていくと「発想の種」としてさらにメリットが享受できると思う。

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