2010年2月11日木曜日

超 格差社会・韓国(扶桑社)

著者:九鬼太郎 出版社:扶桑社 発行年:2009年 本体価格:700円 評価:☆☆☆☆☆
 「狐階段」という韓国ゴシックホラーの映画をみたとき、音楽専攻の高校生が集う合宿所が描かれている。高校生なのに楽器そのほかを抱えた高校生が音楽理論などを勉強したりしている場面が出てくるのだが、この本を読んでなるほどと思った。スポーツにしても音楽にしてもかなり早期の段階で選別が始まり、それぞれがそれぞれのジャンルで専攻分野で猛特訓を受けるとともに、普通の勉強ではソウル大学を頂点としたとんでもないヒエラルキー社会が展開している様子がレポートされている。中学生が深夜の午前1時まで塾に通っているというくだりがあるが、それ以外にも先輩を激励する後輩たちの様子なども含めて、往年の日本をはるかに超えた受験勉強の様子が興味深い。さらにソウル大学だけではない、ということでアメリカのハーバード大学など海外留学する韓国人も増加中とのこと。プサンにあるという韓国科学英才学校などもノーベル賞受賞を意識したすさまじい教育カリキュラムがくまれている模様。その一方でかなりの名門大学でも正社員としての就職率が5割をきっているほか、年功序列の廃止による「名誉退職」、能力主義の浸透と給料格差の問題が顕在化している様子もなまなましくレポート。「圧縮成長」とよばれる急激な経済発展を遂げた韓国だが、日本以上にアメリカナイズされた競争原理が浸透しているようだ。これってお隣の国の実情をまるでこれまで気にしていなかった自分も勉強不足を実感するが、ネットカフェ難民やニートといった問題をかんがえるときにケーススタディとして韓国の事例を分析してみることにも意義が深いと思わせる内容になっている。大卒以上の7万円の平均給与(88万ウォン)の問題や金融機関に対する処理など共通している問題も多い。新書サイズではあるが、これまで目に留まっていなかった「フラット化」した世界の一番近い国の生活がよくわかる内容で非常にオススメ。

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