2010年3月13日土曜日

ユダヤ警官同盟 上巻・下巻(新潮社)

ユダヤ警官同盟 上巻(新潮社)
著者:マイケル・シェイボン 出版社:新潮社 発行年:2009年 本体価格:590円

アラスカ・シトカ特別区。流浪の民ユダヤ人居住が認められた地区だが2007年、アメリカ・アラスカ州に編入される直前にある。そんな最中、心に傷をもつシトカ特別地区警察の刑事ランツマン。ホテルで殺害されたヘロイン中毒のユダヤ人とチェスの盤面に心を引かれ捜査に乗り出すという設定。イディッシュ語(ドイツ語の一部でありユダヤ人が用いる言語)やイスラエル領土問題、ディアスポラ(離散)など見慣れた単語が並ぶが、しばらく読んでいるうちに違和感がでてくる。「そんな歴史はあったのか」、と。ハードボイルド調に書かれたこの小説、歴史も一部修正された異なる次元の世界で発生している異なる世界の話だとだんだんわかってくる。この世界では「満州国」という国も存在するのだ。そして物語は安ホテルで惨殺された青年がなにゆえに「その場所で惨殺されなければならなかったのか」という核心にふみこんでいく…。ユダヤの救世主伝説と架空のアラスカのユダヤ人居住区がからみあい、物語はパレスチナへも波及していく。地味な物語だが、SF的要素あり、歴史の面白さありでやはり上巻から下巻まで一気に読み通してしまう面白さ。

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