2010年3月16日火曜日

完全にヤバイ!韓国経済(彩図社)

著者:三橋貴明 渡邊哲也 出版社:彩図社 発行年:2009年 本体価格:1429円 評価:☆☆☆☆☆
韓国経済について、日本の経済構造と適宜対比しつつわかりやすく、さらに独自の分析。ウォン安という現象は知っていたが、統計データなどから内需の落ち込みと外資の引き上げという事態が継続して今も続いていることから、今後さらにウォンが安くなる可能性も指摘されている。ただし日本よりも資本財(部品など)の輸入割合が高く、完成品輸出の割合が高いという構図で今後外需(輸出)の減少と輸入の減少の縮小均衡の可能性も指摘されている。2009年度の大学卒業生55万人のうち4万人の就職見込みという比率も一部で報道されているが、本書の内容と比較するとおそるべき比率(非正規雇用は含んでいない数値と推定される)。日本以上に非正規雇用者の比率が高い韓国では失業の余波がすぐに若い世代や企業のリストラとして表に現れてくる。その意味では、労働状況の厳しさは日本以上といえるのかもしれない。ただし失業率としてカウントされているのは2010年1月時点では4・8パーセントと日本とほぼ同様の数値になっている(韓国統計庁)。ただし統計庁の比率は表向きで、実質失業率はその4倍とみなす説もある(http://www.labornetjp.org/worldnews/korea/knews/00_2009/1234631667151Staff)。このサイトでは青年失業者が120万人に達するとされており、ただならぬ数字となっている。ウォンの対円比率も2010年3月現在で約12・5ウォン=1円の水準。ウォンの市場が小さいため対ドル比率ほど為替相場が安定しないとはいっても円高ウォン安の動きがここ数年長期的に続いている(さらに続くと著者は指摘)。韓国の超高齢化のスピードも今後の懸念材料になりそうな気配。国民の5割がソウルにほぼ終結しているというのも不動産バブルの一因だったのかもしれないが、外資が投入してそこから撤退することで住宅バブルと株式相場の下落が続いたのも痛い。かつての日本と同じように資産デフレ効果で民間消費支出も相当に落ち込むことが予想される。同じ加工貿易国家とはいってもかなり構図が違うことがこの本を読むとすっきりわかる。近くて遠いお隣の国の経済状況を面白くマスターするにはこの本、かなりオススメ。さらに国際マクロの基本用語もわかりやすく解説してくれているので、国際マクロ経済学などでつまづいた人にはこの本を逆に入門書として読む方法も推奨したい。

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