2010年3月23日火曜日

日本の難点(幻冬舎)

著者:宮台真治 出版社:幻冬舎 発行年:2009年 本体価格:800円
 扱っている題材は日本から世界まで「トピックになりそうなもの」。講義形式の文体で、時に社会学の専門用語も混じるものの、平易な日本語で説明がしてある。「社会の包摂原理」っていう言葉がキーワードになりそうだが、セーフティ・ネットのもっと昭和的な感じ…という個人レベルで解読していければ読者なりの理解には達することができる。解釈も価値基準も無理に著者に合わせる必要性などはなく、しかも自分自身が依拠する「今の社会」をどう認識していくか、という切実な欲求があれば、おそらく何らかのヒントを得ることが可能になるだろう。「社会学」という学問の説明ではなく、終始、「今」「これから」「どう生きるのか」という問いかけが著述されており、結局、書籍の内容がわかったかどうかは、個人個人の「今後」で示していくしかない。日本の保守主義の正統性の2本の流れとか農産物の輸入問題などとにかくてんこもりで分析のツールもミクロ経済学やマクロ経済学の技術を援用している。法律制度の説明も法律入門的な扱いではなく、「社会にとってどうなのか」という観点から著述されているので、法解釈だけでは解決できない「難点」を発見することもできるだろう。この厚さと価格でコンパクトな著述、ただし1回読んで「ふ~ん」というわけにはいかないあたりが「社会学」の難しいところか。

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