2010年3月22日月曜日

筋を通せば道は開ける(PHP研究所)

著者:斉藤孝 出版社:PHP研究所 発行年:2010年 本体価格:700円
 ある程度人生経験を積むと「ああ、自分ってどこにでもいる普通の人間で、特別な存在なんかじゃないなー」と実感する。普通の存在で特別扱いされるわけではない…というのを実感させてくれるのが公教育の大きな役割で、それ以外の課題研究とか授業とかは実は付属物に過ぎない。実際、9年間の義務教育と3年間の高校生活でもっとも有用だったのはクラブ活動だったりする。大学教育は公教育というよりかはやはり個人の任意で行くものだが、それでも授業よりサークル活動の「軋轢」のほうが今は役立っている。
 で、「勤勉と節約」という資本主義の倫理。これって日本社会でも実に重要な概念で、「ああ、この人はお金使いが荒いなあ」と思っているとたいていの人が予想するとおりの破滅的展開に結合していくケース、実に多い。「信用がお金をうむ」というフランクリンの発想はある意味「いやみ」な部分もあるのだけれど、実学的にみていくとフランクリンの生き方、確かに勉強になる。質素な生活を習慣化しておけば、余計な贅沢はしなくなる、てな考え方、窮屈なようでいて長期的にはけっこう楽な考え方にもなるわけで。そうした実学的な根拠がかなりの部分フランクリンに由来してくる…というあたりを斉藤孝がオリジナルにこの新書に集約してくれている。「癖をワザ化する」という斉藤孝の言葉は頭にしみついているのだけれど、フランクリンも個人の考えを「ワザ」にして21世紀の日本に残してくれた。「困難を整理して区分けしていく」というような考え方、アナログ社会からデジタル社会に移行してもけっこう通じる考え方ではないかと思う。

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