2010年3月14日日曜日

戦略の失敗学(東洋経済新報社)

著者:森谷正規 出版社:東洋経済新報社 発行年:2009年 本体価格:1800円
 これまですでに発生した企業のビジネス戦略の失敗例と今後「失敗するであろう」事例の2種類から構成されている。「世の中の大きな流れ」にのれないと失敗する…というきわめてもっともな理屈づけなのだが、「それでは世の中の流れをどうつかむか」「世の中の流れとはなにか」というもう少し細分化した分析がないと応用としては使えない。これは読者の側の作業になるのだろう。電気自動車が失敗してハイブリッド車が伸びてくるといった予想や、中国は経済発展が続くがソフトウェア産業では雇用吸収力が弱いのでインドの今後の経済発展率は弱いのではないかといった推計はけっこうもっともな気がする。東京電力やソニーも「これからの失敗事例」のなかに含まれているのだが、いずれも巨大企業でさらには資本蓄積も相当おこなわれている老舗企業であるため、そう簡単には「失敗」することもなさそう。おそらくこうした大企業が「失敗」するというのは相当大きな科学技術の変化と情報装置の変化がないとちょっとありえないような気がする。現状をよく分析して将来にわたる戦術・戦略をねる。そのとおりだと思うのだが最初に立案した戦略がおうおうにして途中で不具合になるものの組織体が一体性を保つにはその状況にあわなくなった計画をいかに変更するかでまたもめることになる…。成功よりも失敗の事例のほうが学ぶことが多いというが、この本に収録された事例の失敗要因は、さらに別の解釈や要因にもつながりそうだ。

0 件のコメント: