2010年3月16日火曜日

セックス格差社会(宝島社新書)

著者:門倉貴史 出版社:宝島社 発行年:2008年 本体価格:667円 評価:☆☆☆☆
 門倉貴史氏の著作物は「アングラ」とよばれる裏社会のお金の流れを一般公開されている統計情報からなるべく客観的に明らかにしていこうという独自の世界を構築している。この本も「所得格差」がどういう影響を生活に与えているのか、政府の政策は子供手当てよりも所得補助のほうを優先するべきではないかという提案になっている。ただしタイトルがいかんせんどぎついため、かえって「レジに持っていくのはどうもなあ」という気後れを生じさせるのも事実であり…。
 所得の高い層の男性についてはセックスレス、所得が低い男性については最初から女性の選択条件を満たしていないので結婚もできず、またいわゆる風俗産業の料金は高めに設定されているため、そうした「サービス」の利用もできなくなっているという状況を説明。生きるか死ぬかといった場面では確かに風俗などに通っている場合ではなくて、食事や寝場所の確保のほうが重要となる。
 その一方で最近は「肌」が綺麗な女性がもてる傾向にあるということで、化粧品の販売市場の拡大があるほか、美容整形市場も拡大の様相を呈するといった経済波及効果も。その一方で30代前半で年収が1500万円を超える男性の9割が既婚者である一方、年収200万円以下だと結婚しているのは3割で7割近くが独身という状況に。話は空想的社会主義者フーリエの「ファランステール」からEUの移民問題まで幅広く展開して非常に面白い内容に。タイトルさえもう少し「まっとう」な形にしておけばもっと売れ行きは良くなると思う。日本ではまだまだどぎついタイトルはあまり好まれないという雰囲気あると思う。あ、ちなみに世の中の84パーセントの女性は年収400万円以下の男性を結婚対象とはみなさないという統計も紹介されている。「年収なんて気にしない」という女性は全体の16パーセントで、需要曲線と供給曲線を描くと均衡点が他の消費財とは異なり安定していない。一定のタテの供給曲線を境にして「結婚できない女性」と「結婚できない男性」の両者が並存する状況がグラフ化されているので(20ページ)、これはなかなか面白い説明だと感心。

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