2010年3月16日火曜日

創造はシステムである(角川書店)

著者:中尾政之 出版社:角川書店 発行年:2009年 本体価格:705円 評価:☆☆☆☆
 ビジネス書籍が売れているという書店の状況のなかで、ちょっと埋もれがちなのが理工系の先生方が執筆した本。ただしこの本に書かれている要求定義を解決する「設計解」という考え方は理工系のみならずビジネスにも人文系にも応用可能な考え方だと思う。正直いうと経営学関係の抽象的なグラフよりも要求定義を明確にして複数存在する設計解を考えるという説明のほうが個人的にはしっくりくる部分がある。ビジネス書籍の場合にはどうしても執筆した人の個人の主観が大きく入ってくるため、使用されている用語も不統一だし、その紹介されているスキルも必ずしも汎用性があるとは限らないという限界がある。理工系のケースでは数学的に一応汎用性は担保されているので、創造という人文的な用語も「要求定義」「思考演算」「設計解」という用語で統一感をもたして説明してくれると、そこから読者個人の生活に応用することも可能となる。たとえばワンマン社長の思考方法の「思考演算」はパソコンとは違ってブラックボックスではあるのだが、「要求定義」とインプット、「設計解」をアウトプットとして観察をしていると「通常とは逆のことを言っているだけ」という思考演算式が導出されるといった具合。機能を分離させて並行するとか、設計解同士が干渉することがあるとか、無味乾燥にみえてこれだけ応用がきく考え方もないと思う。最終的にはここのモジュラー(個別具体的な解決策)に統一感(インテグリティ)をもたせれば、生活に無理な負担をかけることなく問題解決ができるという仕組みとなる。「仕組み」って結局、一種の「演算式」となるわけで、「これは○○方式」「これは○○」とか人文的なやり方だとインテグリティをもたせるのはかえって大変なことになる。この内容で新書サイズで本体価格705円はかなりお値打ちもの。

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