2012年4月30日月曜日

物語フランス革命(中央公論新社)

著者:安達正勝 出版社:中央公論新社 発行年:2008年 本体価格:920円
 どうにも面白いフランス革命。極端に難しい本が多い中、安達正勝氏のこの著作は1789年のバスチーユ陥落から1804年のナポレオンの戴冠までをフランス革命と位置づけ、ルイ16世についても無為無能ではなくこの時代にあっては比較的有能だったという位置づけで語られている。随所に「自由と平等の光と影」などのコラムがはさまれ、脇役である死刑執行人サンソンについてもページをさくなど著者の歴史をみる視点をかいまみることができる。全6章構成のうちナポレオンの登場から戴冠式までを第6章に独立してとりあげ、かなりページをさいているのが印象的だ。フランス革命以後、内政面では王党派とジャコバン派の舵取り、外政面ではフランス共和制を好ましくおもわないヨーロッパ諸国との戦争があり、共和国の総裁政府では難局を乗り切るのが難しい情勢だった。ナポレオンの登場は必然ではあったが、共和制国家でなく立憲王制だったならば、はたしてピルニッツ宣言や諸外国との戦争もこれほどのものだったかは疑問。1791年のヴァレンヌ事件はやはりひとつの境目だったようだ。自由と人権がテーマのフランス革命も、マリーアントワネットの息子ルイ・シャルルへの仕打ちや恐怖政治における貴族や穏健な共和主義者への死刑宣告は後のソビエト連邦の収容所やポルポト派の虐殺を連想させる。フランス革命前半の明るさと後半のくらさ。そしてナポレオンという独裁者の登場といった流れは「過去に学ぶ」必要性がありそうだ。

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