2010年7月3日土曜日

情報創造の技術(光文社)

著者:三浦展 出版社:光文社 発行年:2010年 本体価格:740円 評価:☆☆
 「下流社会」という思い切ったフレーズで時代に切り込むマーケター。会社を「情報創造体」と切り込むセンスが面白い。統計データについてもざっくりした、かつ限定されたデータで経営計画をたてるケースが多い、と分析しているあたりはさすが。総務省ではないので、実際にはウェブから収集してきたデータをいろいろ加工して仮説を組み立てることが多いわけだが、そうした限られた合理性を前提としているあたりは実務には役立つ。「次の商品」を考える人はあれこれ毎日考える…というくだりにも納得。あれこれ考えて100のうち1つが現実化すればまあいいほう…というのはあまりにも悲観的すぎるだろうか。だが空想に近い企画から現実に製造に入る企画まで数に含めると、おそらく1パーセントでもモノになればいいほうではないかと思う。ノートは1冊にするなど、ツールもかなり限定しているあたりは好ましい。ただ情報を幅広く収集してそのなかから仮説を構築していくタイプの人には逆に精密さを欠けるようにもうつるかもしれない。
 100の現実に対して1つのデータから5や6を生み出す…というのが、「企画」のありかたかもしれない。そしてその5つか6つのうち、どれかひとつでも投下資本の回収し余剰を生み出すものがあれば、それがおそらくビジネスの成功といえるだろう。「直感」を重視する著者の姿勢は、データ重視の時代に一種の「戒め」の役割ももつ。

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