2010年7月12日月曜日

白夜行(集英社)

著者:東野圭吾 出版社:集英社 発行年:2002年 本体価格:1000円
 冒頭から謎をはらんだ殺人事件。そしてその後続く、一連のエピソード。長編小説とよむべきなのだろうが、起承転結の「転」の部分は小さなエピソードで構成され、ラストに近づくと長編化していく。高度経済成長期、オイルショック、黎明期のコンピュータ、ゲームソフトの販売と、アイテムの細かさが時代の変遷を物語る。往年のS銀行オンライン不正操作による横領事件など実際の事件を参考にしたと思しいエピソードも盛り込まれ、その時代を知る読者が一気に感情移入しやすいようにも工夫されている。世代を超えて人気がでるのも当然の19年間ミステリー。貧しさを正面からとらえ、それを生き抜いていこうとする主人公たち。冒頭からラストまで一種の郷愁とともに読んでしまう。100万冊近いベストセラーかつロングセラーになっているのも当然のミステリー。一種の「時代小説」でもあり、時代の暗い部分を拡大した部分もある。その暗い部分を生き抜いていった中には現在もなお、「白夜」のなかを行こうとしている現実の主人公たちが多数存在するような気がする。

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