著者:岡田春恵 出版社:筑摩書房 発行年:2006年 本体価格:820円
最初は世界史の話で最後は「パンデミック(疫病)」の話題へ移り変わる。著者の「熱意」で書籍になった…という感じの書籍だが、過去を振り返り、現在の状況を「感染症」という観点で洗いなおした…という本にもみえなくはない。第6章までで終了してしまえば、それなりにまとまった内容にはなっただろうが、第7章が歴史を振り返って現在を検証したときに浮かび上がってきた論点ということになるのだろう。著者は21世紀は新型インフルエンザの時代と断定しているのだが、ペストや結核、ハンセン氏病と扱ってきて、人類がこれまで扱ったことがない「全身性の重症感染症」という扱いだ。これが歴史を振り返ってさらに7章を付け加えた(ように読める)構成になった理由だろう。これまで歴史的に人類が経験してきたインフルエンザは弱毒性で、今後予想される新型インフルエンザは高病原性。映画「感染列島」でも取り扱われていたような「疫病」として世界中に猛威をふるう可能性があるという。
世界史をふりかえったあとに、今後の話をもってきたのは、いわれのない差別や隔離政策などで治癒すべき患者がかえっておいこまれてきたケースや、公衆衛生や適切な情報開示などが遅れて、かえって感染症が拡大した歴史上のケースを、現在に対比して考える材料にするためだろう。人やモノ、そして鳥が国境をこえていきかう現在、スペイン風邪とは比較にならないスピードで伝播するのが新型インフルエンザ。必要以上におそれるのは意味がないが、逆に何も準備しておかないのもまずい。予測される脅威にたいして、うてる対策は今のうちにうっておき、また適切な知識をあわせもっておく。著者の熱意はそうしたあたりにありそうな。
内容的には非常に面白い。図版も新書なのに豊富。ただし第7章では図版が少なく、話題が転換したあとのフォローアップがもう少しあれば、もっと読みやすい本になっていただろう。2009年6月3日で3刷目というロングセラーになっている。
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