著者:坂本敏夫 出版社:筑摩書房 発行年:2010年 本体価格:720円
評価:☆☆☆☆☆
元刑務官の著者が、一生をささげてきた刑事設備の実情もしくは「雰囲気」を新書サイズに凝縮して伝えてくれる貴重なルポタージュ。犯罪傾向の進んだ囚人ばかりのなかにいきなり放り込まれたエピソードや死刑執行の場面の描写など、外側からはなかなかうかがいしれない状況を知ることができる。死刑囚の処遇や保安状況など、刑法の本だけを読んでいては想像することもできない。最近は「囚人側」からみた刑務所の様子を描く本が多かったが、同じ人間が住む刑務所の「管理側」からみたルポというのは少ない。
死刑執行や終身刑には、刑務所の予算や設備などから反対のスタンスをとる著者だが、その理由や心情もページを詠むにつれてしみじみと理由がよくわかる内容になっている。留置場・拘置所・刑務所の違いもわかりやすく解説されているうえ、法務省・検察庁と刑務所との関係も端的に著述されている。武道の達人というだけではとうてい勤まらないであろう刑務官の仕事や、死刑囚に対する各宗教人の対応や「人気」の理由も興味深い。
「厳罰化傾向」の昨今では、刑務所から仮釈放される囚人よりも何十年も拘留されている囚人のほうが多いようだ。「冤罪」についてもページがさかれており、拘置所もしくは刑務所のなかで「冤罪」をきせられやすいタイプの人間像なども解説されている。
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