2010年7月13日火曜日

幻夜(集英社)

著者:東野圭吾 出版社:集英社 発行年:2007年 本体価格:952円
 実質的に「白夜行」の続編にあたる長編小説。もちろん著者自身が語るとおり別々の作品としても読めることは読めるが、「続編」として読んだほうが、面白いと思う。主人公はやはり美貌の女性で推定20代後半(ただし必ずしも本当にそうかどうかはわからなくなっていく)。脇役として登場してくる中華料理屋の娘「有子」がいかにもどこかにいそうな純朴な女性で、毒々しいストーリーの中で一服の清涼剤。話の流れとしては、「白夜行」「幻夜」ときて、3部作として、2000年代後半を生き抜く「謎の女性」の生き様を見てみたい。パソコンや美容整形など時代の流れ目をしっかり見極めてビジネスを展開していく主人公だが、2005年ごろに再び世間に現れたときには、いったい誰をどのように犠牲にしながら生きていくのだろうか。あるいは逆に「守り」の姿勢にはいって、別の世代の女性が活躍していくのだろうか。「志を受け継いだ第三者」が別の主人公になる…てな続編は多いが、この作家はそうした逃げはうたないだろう。真っ向勝負でさらに続編が書かれるとしたら、大阪と東京を舞台にしつつ、案外、国際化の時代で海外にも目を向けるのではないか。そしてそれはアメリカではないか…という気がする。サイボーグのように生き延びて、名前も国籍も入れ替えて、三度目の勝負にうってでるとしたらうってつけの舞台ではないかと思うのだが。

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