2009年2月27日金曜日

株マフィアの闇~巨悪欲望の暗闘史~(大和書房)

著者:有森隆+グループK 出版社:大和書房 発行年:2008年 評価:☆☆☆☆
 三部作の第3巻だが、テーマは現在から明治時代までさかのぼり、東京証券取引所や大阪証券取引所の黎明期からの「株式取引」の有名人をたどる。「義侠の相場師」という今では考えられない存在のような岩本栄之助氏が鮮烈だ。「カラ売り」とはいわば手元にはない株式を他人から借りるなどして「売る」。そうすると市場に株式があふれでて株価は下がるが、株価が下がったところで買い戻して持ち主に株式を返却、自分はリザヤを稼ぐという方式だ。岩本氏は義侠の相場をはっていたが、このカラ売りを1916年の大戦相場にも貫いた。買い手の側は野村徳七商店。ページをめくるごとに息を呑むような展開だが、歴史が示すように勝者はすでに決定している。野村徳七は野村財閥の基礎を固め、現在のりそな銀行、野村ホールディングスにつながるグループ構築を進めていく…。現在の話も多少まじっているが、歴史的に取引所の取引や相場師を特集するというのは非常に面白い。経済の本というよりもむしろ生きた人間の姿を描いた歴史本といった感じだろうか。

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