2009年2月25日水曜日

平成ジャングル探検(講談社)

著者:鹿島茂 出版社:講談社 発行年:2007年 評価:☆☆☆☆☆
 表紙にうつる怪しいサングラスの強面の男…この方がれっきとしたフランス文学者であり大学教授でもある鹿島茂氏。大学教授という制約もあってデータマンや編集者とともに探検隊を組織して大都会の12の闇を探検していく。坂口安吾の「東京ジャングル探検」の平成バージョンだが文庫本のあとがきに著者自身が書いておられるようにすでに「古書」「資料」という扱いにならざるをえない部分もある。しかし上野駅周辺についての分析はかなり鋭い。「なんとなくクリスタル」の主人公がそのまま生きていれば「43歳」(2009年現在であれば50歳)。かつての価値体系や教養体系が崩壊した今…という設定で上野という街を分析するのだが、「柏在住ブランド主婦」という切り口で上野という町をきりとるその「技」が素晴らしい。「年齢はへてもアーベインな生活志向」ということでそれが上野という街に結びつく…というわけだが、一つの街の歴史をこれだけ多角的に分析できる著者の力量はすさまじい。そのほかに赤坂、新宿、錦糸町、浅草、吉祥寺などが題材としてとりあげられている。面白い。

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