2011年7月25日月曜日

この世で一番大事な「カネ」の話(角川書店)

著者:西原理恵子 出版社:角川書店 発行年:2011年 本体価格:552円
西原さんの著作物には10年前にかなりはまり、当時に出版されていた刊行物はさかのぼって全部入手し、全部読みつくした。その後ちょっと著作物から遠ざかっていたが、その間に文化庁の賞や手塚治虫賞などを受賞。この世の中でうまくやっていけない人たちをメインにすえた物語をつむぎだしていた。この本では、幼少時から高校時代、高校との法廷闘争の時代、大学時代そしてフリーとして活動しはじめた時代から結婚の話などを一貫して「カネ」の視点から分析してみせる。あんまり抽象的話で人生を語られると「ちょっと苦手」という読者も、この本でなら「人生ってそういう面があるかも」とうなづけるかも。いずれも等しく人生を語る手段であるとともに、選択を拡げてくれる手段。ただし生活が困窮してくるとやりくりにコマって、髪型から生活観まできつ~い感じになってくる。田舎のパーマをかけたきっついオバハンができあがるまでのプロセスが明解に語られているのだが、なるほどきついパーマは一回かけたパーマを長引かせるためのものだったか。「最下位ならば最下位の戦い方」という発想はなんとなく野村克也監督にも通じるものがないでもない。天賦の才能よりもサービス精神や、月給30万円を目標とする…といった地道なテーマは、賭博にはまっていたころの西原さんとは裏腹の着実な生き方。その後、バングラデシュのグラミン銀行などに興味を覚えていく過程にはなくなられた元ご主人の生き方も関係しているとのこと。「個性」といった言葉ではなかなか現実をとらえにくいが、「カネ」という具体的な指標をもってくると見えてくるものがある。生活や人間関係をおしはかる上でも「カネ」の話、一回この本を読んで考えてみるのも悪くない。

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