2011年7月23日土曜日

IFRSで企業業績はこう変わる(日本経済新聞出版社)

著者:窪田 真之 出版社:日本経済新聞出版社 発行年:2011年 本体価格:1700円
いささか高い本ではあるが、IFRS肯定の書籍としては非常にわかりやすい本。しかも出荷基準や定率法などの具体的な事例を使用してIFRSの「原則主義」(?)を説明してくれている。新聞などでよく紹介されている売上高の計上は「検収基準で」という著述もこの本を読めば原則主義と実質主義にてらせば出荷基準をIFRSが否定しているわけではないことが判明する。収益計上のタイミングとしては紆余曲折はあったものの工事進行基準をめぐる一連の動きが興味深い。支配の移転が徐々に進むケースでは工事進行基準を採用し、そうでない場合には工事完成基準を採用するという説明で、日本の工事契約会計基準よりもすんなり頭に入ってくる。現時点ではIFRSの日本の上場企業連結決算の導入は2015年をずれこむ公算が高い。が、前倒しでIFRSを導入する企業があるほか、会計基準もIFRSの動きをにらんだ整備が進められることだろう。「強制適用」には反対だが、各企業がそれぞれの実情に応じて随時IFRSを導入していく動きが強まれば、その段階で包括利益やIFRSの「強制適用」にふみきればよく、強制適用ではなく、選択適用によって投資家による企業の選別も進むことだろう。「新聞」はあくまで「きっかけ」でより体系的に何かを学習するさいには本を読む。記事やウェブの位置づけを再確認させてくれた本でもある。

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