2011年7月22日金曜日

普通のダンナがなぜ見つからない?(文藝春秋)

著者:西口敦 出版社:文藝春秋 発行年:2011年 本体価格:857円
本の装丁とタイトルをみて「文藝春秋の新書?」とはにわかに信じがたく、さらにはイラストの「ヘタウマ」ぶりや東京大学卒業で元日本長期信用銀行の行員でさらには外資系コンサルタントも勤めて…という著者のキャリアも目をひく。これ、文藝春秋の新書だが、天下の文藝春秋が発刊しただけあって非常に面白いうえ、数字と論理に裏づけされた内容や手法はほかのジャンルにも応用可能。「なぜ客が来ないのか?」という疑問に答えるノウハウがつまっている。その意味ではマーケティングの本ともいえるだろう。
「なぜ普通のダンナが見つからないか?」という答えについてはマーケティング的な解釈をすれば「普通のダンナという市場が非常に狭い」。普通の条件をすべて満たす男性は確率的には100人に1人しかおらず、あとはたいてい何らかのクセをもっているという意味。さらに東京都の調査がひきあいにだされ、公的資料をもとに平均年収400万円以上の独身男性の比率は3.5パーセント。実際には男性人口の19.5パーセントが年収400万円以上なのだが、残りは妻帯者。地方にいくとさらにこの比率は下がるということになる。価値観が近いというのも非常に難しい比率で…といった数字によるアプローチ。これで市場の規模が明らかになり、さらには統計予測を展開。いわゆるマーケティングリサーチで、これによって問題点が浮き彫りになっていく。そして現実と理想のハザマを埋める解決策が呈示されていくのだが、ここからが外資系コンサルタント出身の著者の腕の見せ所。日本的経営とはまた異なる視点で新しい解決策がずかずか呈示されていく…。3割はある程度はジョークが入っていると推測されるが7割がたは真面目な内容、さらにはマーケティングの入門テキストとして読みといていくと、著者が活用しているオリジナルのデータはおそらく入手が難しいが、一般統計から仮説をとりだしていく手法は仕事でもプライベートでも応用がきく。レジに男子がもっていくにはややタイトルがちょっとアレなのだが、それでも勇気を出して男子が読む価値は女性と同じくらい、「あり」、である。

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