2011年7月11日月曜日

この経済政策が日本を殺す(扶桑社)

著者:高橋洋一 出版社:扶桑社 発行年:2011年 本体価格:720円
日本銀行の白川総裁はその昔通貨供給量の増加と物価の上昇について因果関係をみとめていたらしい。高橋氏はこの著書でも一貫して金融政策重視、通貨供給量の緩和とインフレターゲットの導入をとなえている。デフレも円高も円の供給量が需要量に対して相対的に不足しているから起こる現象なので円の供給量を増加すればデフレも円高も緩和するという意見はわかりやすい。ただ、それでもいささか心配なのは、やはりハイパーインフレの問題と円安誘導の問題。ハイパーインフレは絶対に起きないというのがインフレターゲットの導入の論拠となっているが、これは本当にそうなのだろうか。過去の事例では多少の年月をかけてインフレはおさまったとされるが、過去の事例がそうであったからといって次もそうなるとは限らない。定式化された貨幣数量説も新たな経済事象でまた否定されることもありうる。円安誘導は輸出産業を潤わせるが、円高傾向はこれから火力電力にシフトしていくであろう電力産業にはむしろ好材料のはずだ。必ずしも円高が悪いわけではない。適正でない為替水準が悪いということにつきる。増税よりも国債発行で収入をまかなうべきという論理には賛成。時間的に分散して負担したほうがこうした災害支援にはベターだろう。いきなり増税でこれが今後も続くとなれば経済的影響ははかりしれない。中見出しはやや過激だがこれは編集者がつけたものではないかと推察される。内容的には非常にオーソドックスな論理構成で、マンキューのぶあつい経済学の本をいきなり読むよりもこの本で全体の概要をつかんでおくほうがきっと経済学の面白さは伝わるのではないかと思う。良書、ただし考え方に賛成する人としない人の両方はでてくるだろう。

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