2011年7月15日金曜日

図書館戦争(角川書店)

著者:有川浩 出版社:角川書店 発行年:2011年(文庫本) 本体価格:667円
公序良俗を乱し、人権侵害の言論を取り締まるための「メディア良化法」が施行されて約30年後の架空の日本を描写。法務省に本拠をおくメディア良化委員会と良化特務機関とそれに対抗する図書防衛員は地方行政独立機関として軍事演習を続けている。そんな図書館戦争のさなかに「図書」を守るために笠原郁22歳が入隊する…。一種の青春小説なのだが、それでも「ちょっとこれリアル…」てな描写もあちこちに見受けられる。すでに東京都でも青少年育成条例などで図書の取り締まりが始まっているが、「俗悪」なメディアが俗悪な行動を誘因する…という考え方が本当に正しいのかどうか。実際には、検閲制度が徹底しているファシズム社会ほど隠蔽されてはいても陰惨な殺人事件が発生しているのではないか…。検証の余地がないまま、「青少年に悪い影響を与えるから」という理由で、図書の貸し出しなどが自粛されたり販売が抑制されるのはあまり好ましい状況ではないと思える。たとえ俗悪であっても、選択の自由は常に読者の側にある。最初は「…」という小説の世界にはまってもその後の読書経験はだれにも予測はできない。メディアの自粛に過敏なアメリカであれだけの犯罪率というのも理解しがたいわけだが…。
ともあれ、この本では最終的に大人同士の「話し合い」で必ずしも武力闘争ばかり続けているわけでもない。子供から大人に到るプロセスでは「あうん」の呼吸を読み取ることもまた必要にもなる。ちょっと笑えて、ちょっと考えて。そんな図書館戦争シリーズ、これからまだまだ文庫本で続刊予定。

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