2008年12月16日火曜日

光と影の誘惑(集英社)

著者:貫井徳郎 出版社:集英社 発行年:2002年
 「長く孤独な誘拐」にまず度肝を抜かれるが、こうした誘拐事件はなさそうでリアリティが相当にある。人によってはお金よりもまず自分の子供が第一と考える人は相当多いわけでこのトリックなかなかのもの。翻訳調の「二十四羽の目撃者」も実験的でユニーク。表題の「光と影の誘惑」は著者が得意とする叙述文体を利用したトリックで、映画化は難しいと思われるが、小説という土俵ではやはり実験的小説といえるだろう。こうした実験がつみあがって独特の貫井ワールドが構築されていく様子と読者の関係は、アイデアの蓄積と発展をリアルタイムで見るようで面白い。
 貫井の小説の表紙もまたどれも写真やイラストが効果的に使用されており、この小説の造本もかなり凝っている。「わが母の教えたまいし歌」はリアルに怖い作品で4つの短編の配列もかなり計算されているとみた。

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