2008年12月31日水曜日

本を読む本(講談社)

著者:M.J.アドラー、C.V.ドーレン 訳者:外山滋比古 槇未知子 出版社:講談社 発行年:1997年 評価:☆☆☆☆☆
 講談社学術文庫の1299番。1940年にアメリカで発行。初級読書から分析読書まで「読み方」を体系的に著述。初級読書とはいわば「分理的に」読む方法で、文法や単語などの形式が問われる読書。たとえば日本国憲法の9条を読んで、単純に解釈してしまうようなことだろう。第2レベルが点検読書でジャンルをまず見分けて大局的に解釈を加える。日本国憲法だと、法学の観点から拡大解釈のケース、縮小解釈のケース、類推解釈のケースといろいろな読み方ができるようになるレベル。そしてその点検読書の次に分析読書のレベルとなる。「系統だった読書活動」ということで、本の内容をかみしめながら読む。日本国憲法だと判例六法や種々のコメンタールを参照しながら「読む」ということになるだろう。そして最終レベルが「シントピカル読書」。比較読書法ということで憲法についても比較法学ではどうか、社会学ではどうかといった種々のジャンルにまたがって考察することが可能だ。単に各テキストの比較ではなく、「はっきりとは書かれていない主題」を自ら発見できる水準ということで確かにこのレベルまでくると、「読書」の真髄に達したといえるだろう。そのほか「書き込み」の方法などさまざまな読書技術を伝授してくれる書籍。本当はおそらくこうした「読解法」のようなスキル本は読書の自由なあり方を制限するのかもしれないが、「濫読」すればするほどこうした「ベクトル」にそった分類は有用となる。定価は900円だが、内容と比較すると格段に安い。すぐには必要なくても購入して本棚にそろえておきたい1冊。

0 件のコメント: