2008年12月16日火曜日

強欲資本主義~ウォール街の自爆~(文藝春秋)

著者:神谷秀樹 出版社:文藝春秋 発行年:2008年 評価:☆☆☆☆☆
 現役の投資銀行のバンカーによる日米経済論。アメリカ経済の衰退の原因をドルが基軸通貨であることを利用した借り入れ消費体質であることと、投資銀行の暴走にあると分析。ゴールドマン・サックスなどを例として取り上げて、商業銀行と投資銀行の変質などをわかりやすく説明してくれる。モノ作りに経済の根幹を見出す著者は「バンカーは脇役に徹するべき」との持論を展開。強欲というそのネーミングのいわれを企業の買収や合併などの実態から解読していく。
 サブプライムローンがなぜゆえに不良債権化したのかも、この本で解明されるほか、予想以上に大きな変化を日米の経済体制に与えることも実感。下村治氏の著書を引用しながら、健全な消費や健全な経済といった哲学論にまで展開していく。実際のところ、マネーゲームはパソコンの画面の上で展開されるが「お金」そのものはリアルな実物である。アメリカのバブル崩壊のあとに世界同時不況が到来しつつある今、「基本にかえる」という著者の主張にうなづける部分は多い。「金融立国」ではなく、「ものづくりの原点への回帰」を促す著者の主張はバブル崩壊後に常に説かれる話だが、今度こそ耳を傾けて製造業中心、技術立国中心の経済体制をめざすべきときなのかもしれない。

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