2008年12月28日日曜日

修羅の終わり(講談社)

著者:貫井徳郎 出版社:講談社 発行年:2000年
 キリスト教の影響と「輪廻」(転生)に一貫してこだわりをみせる作家貫井徳郎の文庫本800ページにも及ぶ大作。「叙述ミステリー」というよりも登場人物がそれぞれの「救い」を求めて時間軸や空間軸を超えて必死で生きようとする「因果」の描写がすさまじい。セクシャルな描写は苦手とされている著者が果敢なレイプシーンにも挑戦。物語は1970年代と1990年代の2つに分かれて進行し、登場人物は大きく分けて3つの空間軸で進行していく。ラストにはそれぞれの救いがそれぞれの時間軸と空間軸で展開されるが、あるものは自らの「蟲」に酔い、あるものは復讐に生きる。すべてが終局を迎えたときに読者が抱え込むのはカタルシスよりも、「救い」の多様さに圧倒された一種の虚無感かもしれない。謎解きよりも、「人生」の多様さを楽しむべきか。「物語」ではあるが、リアリティも迫力も十分の大作。

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