2011年1月31日月曜日

ローマから日本が見える(集英社インターナショナル)

著者:塩野七生 出版社:集英社インターナショナル 発行年:2005年(単行本) 本体価格:1300円
すでに2008年から文庫版も出版されている(680円)。もともとはムック形式での出版だったが、単行本、文庫本と形態を変えても人気を根強くもつローマ論。新潮社から発刊されているローマ人の歴史は今年最後の文庫版が発刊される予定だが、それをコンパクトにまとめて日本論も述べられているのがこの本の特徴。ローマ人の歴史シリーズも面白いが、こうしたダイジェスト版も非常に面白い。いわゆる通史ではないが著者が一番関心を持っている時代や人物があぶり出しになるのと同時に、通史では得られない簡潔明快なコメントが読める。時間がない人にはこの本をまず読むことをオススメしたい。もちろん新潮社から発刊されているローマ人の歴史も面白いが、いかんせん長い。通勤時間を利用するにしても相当な時間を要するが、ローマについて白紙の状態で読むよりも、まずこの本を読んでから通史を読むというのもありだろう。多神教でしかも大陸の一部から地中海全体を支配するに到ったローマ帝国と日本とでは一見共通するものがなさそうで、実は人と人との相互関係ということでは共通点が多い。ローマが滅亡した原因はローマが発展した中にこそあったのだが、発展のその背景をみていくと日本のこれからの社会形成にも有用なポイントがいくつも見て取れる。それは異文化に対する寛容さや多民族国家をたくみに一つの国家にまとめあげていく手法などにも読み取れる。「歴史って面白い」というのは、たとえいわゆる「インテリ」がどれだけバカにしようとこの塩野七生氏の著作物をおいて他にはなかなかみあたらないというのが実感。

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