2011年1月17日月曜日

超ヤバい経済学(東洋経済新報社)

著者:スティーヴン・D・レヴィット、スティーヴン・J・ダブナー
出版社:東洋経済新報社 発行年:2010年 本体価格:1900円
前作「ヤバい経済学」が非常に面白かったので続編も購入。とはいえ前作よりも面白さは半減。もしかするとすでに「結婚」や「犯罪」などを経済学的に研究したベッカーについていくらかはわかってきていたからかもしれないし、論議を呼んだ環境問題についての「章」もマイケル・クライトンの名作「恐怖の存在」(早川書店)を読んだあとだと衝撃も少ない。二酸化炭素だけが必ずしも地球温暖化の「原因」ではないことはある程度知れ渡ってきている(ただし地球温暖化そのものは避けなくてはまずい。最大の原因は水蒸気やそのほかの化学物質であるにせよ)。で、ちょっと面白いなと思ったのは銀行預金のデータの動きからテロリストを見つけ出す方法。まだ完全なデータ分析ではないらしいのだが、登録されている住所が私書箱だとか、一度に大きな金額を預金して小額で引き出すとか、水道光熱費やローンなどの引き出しがないとか…などを組み合わせていくと特定の犯罪集団に結びついていくというアルゴリズム。面白い。日本でも犯罪収益移転防止法が施行されていることもあり、形式的な窓口確認よりもアルゴリズムで犯罪収益をあぶりだしていくという手法、すでに科捜研あたりで開発されているのかもしれない。また経済学では実験ができない、という思い込みをすてたエピソード(サルにオカネの価値を教えたらどうなるか、など)も興味深い。人間の行動は「インセンティブによる」という結論だが、それが一回限りのゲームなのか、あるいは継続的なゲームなのかでもインセンティブは変化してくる。あるいは「見られている」のか「見られていないのか」でインセンティブそのものが変化するっていうことも。そう考えると人間は経済的に合理的な存在と考えるよりも、まずは「交換ゲーム」という枠組みで人間行動をとらえてルールとインセンティブで経済行動を解明していくっていう方法、それなりに今後の発展が見込めるのではないかと思う。おもえば無差別曲線と予算制約式でなんらかの選考が行われるという非常識なモデルでミクロ経済学は終了した記憶があるが、そこからすればより現実に役立つ学問になってきたものだ。

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