2011年1月3日月曜日

知らないではすまない中国の大問題(アスキーメディアワークス)

著者:サーチナ総合研究所 出版社:アスキー・メディアワークス 発行年:2010年 本体価格:743円
中国の政策金利が上昇した。理由として考えられるのは、インフレーションの過熱化の鎮圧。土地と株式の時価が考えられないくらい高騰している一方で内陸部ではまだ所得水準が低い。共産主義国家なのに、格差社会になっているという不可思議。西欧の論理でもなく、また儒教の論理でもなく、さらにはマルクス主義の論理でもないこの経済大国は、20年後には世界一位の経済大国にのしあがる可能性がある。現在は生活必需品をメインにした輸出貿易に特化しているが、パソコン(レノボ)や自動車(ボルボなど)をメインとした高付加価値商品の輸出に切り替えるとともに内需メインの経済体制に持ち込むつもりのようだ。そのためには技術開発と研究の蓄積が必要だが、イデオロギー統制のきびしいこの国ではたしてソニーやホンダのようなオリジナリティのある商品が作り出せるものかどうか。この本ではそうした経済成長をどこへ舵取りしていくのかを簡潔に説明してくれると同時に、中国の女性に資生堂の化粧品が人気を集める理由や、農民工のストライキの理由、ネット世論が中国共産党幹部に影響力を与える度合いと外交政策、太平洋西部への軍事力覇権を急ぐ理由(空母の開発)、環境問題への取り組みやアフリカ大陸諸国への経済支援の思惑などが解説されている。中国共産党幹部が先日天皇陛下との会見をごり押し(?)したのが話題となったが、中国共産党は国家のさらに上に位置する存在で、しかも現在のトップのうち5人が退任することを考えるとあながち「ごり押し」ではなく、国家元首と次期国家元首との対談ということでそれほど問題になることもなかったのではないかという考え方もでてくる(日本の「元首」は内閣総理大臣ではなく、天皇陛下となる…というのが国際外交上の通念)。体制が異なるためなんともいえないが中国の国家主席は軍事のトップであり、中国共産党のトップであり、さらに中華人民共和国のトップの3役職を兼任しており、日本の内閣総理大臣はあくまで行政のトップという位置づけからすると、格としては天皇陛下と会談するのが同等という考え方だ。だとすると、先日の管首相と中国国家主席が廊下の長いすで非公式に会談した、というのも、行政職のトップと国家主席とでは「対等ではない」と中国側が考えていたフシがある(実際、日本の内閣総理大臣は日本のすべてのジャンルのトップというわけではない。日常流れ出るニュースの数々を一つの「流れ」「つながり」で理解していくのにはこうした新書が理解の手助けにもなる。新聞では散発的にしかでてこない中国の動向だが、確かに2020年をみすえてみると、まるっきしムシできる存在ではなく、かといって過大評価するべきでもないという等身大の国家像がみえてくる。

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